蛙、帰るのラビリンス  〜蛙舞う市役所にて〜

雪のように白い光が市役所の窓を覆っていた。
改装工事のおかげで、建物は確かにきれいになった。
タイルは光を反射し、手すりは磨かれ、廊下は以前よりも広く感じられる。
しかし、変わったのは見た目だけだった。
属人的な構造も、ナルシストな高齢職員の自己陶酔も、何も変わらない。

自動ドアが静かに開くと、光の中に長いロビーが広がる。
壁際には発券機が並び、番号札を引けば順番が表示される。
数字は小さく、冷たい白色の光に照らされ、意味を持たない指示のように感じられる。

番号札を手にすると、椅子の並ぶ待合室で静かに待つ。
蛹から最初の小さな蛙がぴょこんと跳ね、机の端を横切る。
微かな足音がタイルに反響し、空間の静寂に違和感を生む。

呼び出しの番号が表示され、窓口へ向かう。
職員は一瞥もせず前置きを口にする。
「私はこの件について詳しく知らないのですが……」
言葉は自分に言い聞かせるように繰り返される。
10文字ほどの付箋を取り出し、1分ほどかけて自分が満足する綺麗な字でメモを書き込む。
文字は整っているが、情報としてはほとんど意味を持たず、ただ自己満足を満たすための動作に過ぎない。

手元の資料を押しながら眉をひそめ、しばらく自分で解決しようと試みるも、問題は微動だにせず、ついに他の職員を呼び寄せる。
新たに現れた人影を前に、先ほどまでの困惑は嘘のように消え、まるで自分の手柄であるかのように大げさに振る舞う。

蛹から飛び出した小さな蛙は、机の上や卓上カレンダーのページを跳ね回り、影を揺らす。
次第に数を増やし、光の筋を飛び越え、紙の山を踏み、観葉植物の葉に乗って跳ねる。
蛙の足音が床や机を震わせ、部屋の空気は湿り、光の筋は波打つ。

気づくと、蛙はもはや制御不能になり、天井や窓枠、壁の隅にまで広がり、部屋全体を跳ね回る。
紙や付箋は舞い上がり、ペンや書類は微妙に浮き、机の上で跳ね回る蛙と共鳴する。
説明の言葉も、手柄の演出も、あーでもないこーでもないの議論も、
すべて蛙の踊りに吸い込まれ、日常と非日常の境界は消え、時間は永遠に流れ続ける。
絶望は静かに、しかし確実に部屋の隅々に浸透し、光と影、紙と蛙、自己満足と無意味な手続きが交錯する不条理な世界が完成する。